雨の一日。

そもそも手にモノを持って歩くのが大嫌いな私は、どんなに雨が降りそうな空模様でも、まだ降っていなければ傘を持たずに出る。
ヤサの最寄駅にたどり着くまで天候さえ保ってくれれば、あとは電車に乗るだけ。
勤務先の最寄駅からは地下道を通じて、傘要らずでビルの中へ入ることができる。

傘といえば、電車の中などで濡れた傘をきちんと束ねないヤツをけっこう見かける。
そういうヤツに限って、他人のズボンやスカートを濡らしてることをなんとも思ってないように見える。
しずくのたれているその傘を、オマエの顔に押しつけてやりたいぜ、まったく...と憤りを禁じ得ない。
また、座っている前に立つヤツに限って、やはりきちんと束ねないし、束ねていてもヒトの膝にくっつけてくれるので、そういうときは脚で持ち主のほうに押しやるようにしている。


傘でもうひとつ。
そんな私でも、出るときに雨天であれば、さすがに傘をさす。
ただし、メシを喰ったりコーヒーを飲んだりとかでどこかの店に入るときは、入口の傘立てには立てずに、手元に持っていくことがほとんど。
しかしなぜか、今日に限ってそれをしなかったところ、案の定、店を出るときに私の傘が持ち去られていた。
ああ、今日に限ってなぜ?

似たようなカタチのものがほかに残っていれば、どうせビニール傘だし間違えて持っていっても仕方ないか...と思って傘立てを見渡すも、それがまた似ても似つかないものばかり。
手に持ってみて、それがさっきまで握っていただろう自分の傘の柄でないことが判断できないオマエは、掌の神経がマヒしているのか?と云いたい。

かといって他人のものとわかっている傘を、代わりにそこから取って使うのかというと、それは私の倫理観が許さない。
私は別に潔癖性ではないが、どこの誰が握ったかわからないような傘など触るのもイヤだし。

そんな気持ちが先に立ち、しとしと降る雨を避けるように小走りをした、そんな午後であった。