作戦進行中 - 卒検終了

普通自動車、小型、普通、大型二輪とも、9:00amに教室に集められ、机上には受験番号を表示したプラ板が置いてあった。
この日は大型二輪の卒検受験者は五名。
私の番号は2ということで、検定順序も二番目だった。
天候としては暑くも寒くもなく、路面も乾いており、コース説明をする試験官の言を借りれば「絶好の卒検日和」。
さらにプレッシャーをかけるがごとく「...ですので全員合格でお願いしますね」などと云う。
検査手順、検査終了後の合格発表と合格者の卒業式の時刻が説明されると、「では二輪の方は、いつもの教習の待合室へ行ってください」と早々に部屋を追い出され、足早にいつものほったて小屋に入る。
ほかの受験者がそうしているように、私もヘルメットを抱えてベンチに座り、試験官が来るのを息を殺して待つ。
別にこれから死刑台に登るというわけでもなかろうに、室内のこの重苦しい空気はなんだ?と云いたくなるくらい、物音を立てるのも憚られるムード。
緊張をほぐすために室外に出て一服したいところだが、この状況ではそれもままならず。

待つこと5分ほどで、試験官が登場。
すでに保有している免許証と教習原簿とをつき合わせて本人確認が行われ、卒業検定用のゼッケンが渡される。
検定方法は受験番号順にひとりずつバイクに乗り、この日指定されたAコースを走るというもの。
試験官は後ろからCB400で併走し、一挙手一投足を見るという方式だった。

「次の受験者は、二輪の発着点でヘルメットを着けずに待っているように」とのことだったので、1番の受験者が走っているのを遠目に見ながら、Aコースの順路をアタマの中で思い起こしてみる。
その間にも、1番は特に問題もなく走っているようで、私のいる場所からわりとよく見える、二輪車課題コース - 一本橋波状路スラロームに入っていった。

私の場合、いつもの教習で、一本橋の二回目くらいまではたいてい落ちてしまうので、今日も同じように脱輪したら一発アウト...なんといってもこれが恐怖...などと思いながら眺めていると、1番は難なく橋を通り抜け、凸凹の波状路も指定以上のタイムを持続して抜け、次のスラロームへ入っていった。
なにぶんに細かいところまでは見えづらいので、これもあっさりクリアか?と思っていると、試験官のCB400から無情のクラクションが。
これすなわち、走行に問題あることを意味し、どうやら車体かカラダがロードコーンに接触したらしい。
しかもこのミスは検定中止となるため、他人ごとながらあまりにも哀れ。
そのまま戻されるのかと思っていると、いちおう最後まで走らせてはもらえていた。
終わってから試験官が簡単な総評のようなことを話していると、1番は「一週間ぶりに乗ったので云々...」と云い訳していたのが聞こえたが、そりゃ私だって同じ条件。

1番の失格はなんとも目の毒・気の毒だったが、いずれにしても次は私の番。
氏名と生年月日を云わされ、「それでは乗車してください」の合図でいつもとはちょっと感じの違うCB750に跨る。
どうもこれは検定用にきちんと調整のしてある車両のようで、ナンバープレートのところには「検定」の赤字が表示されており、いつもの何号車という表示がない。

緊張の面もちで大げさにミラーを調節するフリをし、キーをひねってギアのニュートラルを確認、スタータを押してエンジンを始動、右のウインカを出して後方確認、さてスタート...でクラッチを繋ぐとエンスト...うへ!と顔面蒼白。
しかし試験官は何も云わないので、もう一度エンジンを回し、次はまあ順調に走行開始。
コースを半周して左折し、クランクに入る。
ココはいつもは問題なく抜けているので、あまり心配していなかったのだが、やはり緊張でカラダがこわばっていたのか、バランスを崩して左足をついてしまう。
「足つきは一回だけなら減点しません」と云われていたのでクラクションも鳴らず、そのまま検定続行。
8の字、踏切、見通しの悪い交差点を抜け、またまたコースをぐるっと回って二輪の課題コースへ...とうとう恐怖の一本橋にさしかかった。

精神統一...というほど武道の精神を知っているわけでもないが、それに近い心持ちで平静を装い、ゆっくりと走り始める。
巾20cm、長さ15mの一本橋断続クラッチと後輪ブレーキでゆっくりと進む。
指定タイムは10秒以上を保持すること...ただし10秒を切ってしまっても減点はするが検定中止ではないので、落ちそうならさっさと抜けてしまうように...と云われていた。
本番に強いのかなんだかわからないが脱輪せずに無事通過。
次の波状路は指定の5秒以上をキープして難なく抜け、1番が失敗したスラロームもクリア、再びコースへ出て急制動へ。

ココもブレーキのタイミングを間違えると車輪ロックや指定線を越えてしまったりするので油断は禁物。
40km/h以上で制動をかけると間違いなく止まれないので、メータを見ながらぴったりの時速をキープ。
指定の場所でブレーキをかけ、わりと美しく止まることができた。

ここでヒザのプロテクタの帯がはずれてしまっているのに気づき、試験官にひとことことわって着け直す。
このことは微細ではあったが、心身の緊張を緩和できたようで、次のニガテ項目である坂道発進もエンストすることなくクリア。
あとは一時停止を抜けてコースをぐるっと回り、発着点へ戻る。
かくして全コース、止められることなく走破できた。

試験官の総評は「法規走行もきちんとできており、一本橋波状路のタイムも充分、おおむね問題なし」とのこと。
たしかに、カーブ前の減速や一時停止や左右確認については、いつもなら絶対にしないほど大げさにやってみせたので、その作戦は成功だったようである。

こうして卒業検定は終了。
合格発表は12:20ごろとのことでずいぶん時間が余るので、いったんヤサへ帰還。