地球儀が欲しい

幼少のころを思い起こすと、一時期に二つも持っていたことがある。
たしか両親が買ってくれた直径25センチ程度のもので大喜びしている矢先に、父方の叔父が遊びに来たときに、おみやげで地球儀を持ってきたのだ。
いま風に云えば、完全に「カブった」というところだが、おみやげのほうの直径は50センチ弱もあった。

わがコトながら、子供とは率直で、それがゆえに残酷である。
なんでもでかい方がイイに決まっているので、25センチには見向きもしなくなった幼き日の私。
いまにして思えば、オレってなんて親不孝なのだろうとも思う。
叔父としても、わが家に地球儀が来たばかりであることなど知る由もなく、善意で買ってきてくれたのだが、そのことを知ってきっと気まずい思いをしたに違いない。

そんなオトナ同士の葛藤などみじんも感じることなく、狂喜乱舞して両親に「おじさんの地球儀、でかいよ!」と云う幼き日の私。
あどけなく喜ぶ息子の姿に、両親は胸中で泣いていたかもしれない。
いまの私が当時の両親の立場なら、冷静を保てるかどうか自信がない。

その後、25センチの地球は「二つあってもしょうがないから、だれかにあげよう」という母の提案によって里子に出された。
そのときも私は「おうおう!持ってっちゃって!」みたいな主旨のことを云ったような気がする。
その証拠に、どこへもらわれていったのかいまだに思い出せない、というか知ろうとももしなかったのだろう。

いずれにしてもこの件は、今度実家へ行ったときに母に訊いてみようと思う。

このことを教訓に、男の子のいる家におみやげを持っていくときは、地球儀だけはやめておこうと思う。

それにしても当時は知らなかったが、地球儀とは高額なシロモノである。
さっき探していて、ただ世界地図が書いてあるだけの球っころに、そんなに払えるかよ!という気になった。