やっとこさ木曜日も更けた

あと一日しのげば、うれしい三連休。


今日はひさびさに呑んだのだが、帰りに混雑した電車に乗り込むと、まだ学生とおぼしきヤツが私の後ろに立っていた。
あとからもどんどん乗ってくるので、私も押されてそいつを中に押し込むようなかたちになった。
なんだか私の背中に顔をもたれかけるようにしてやがったので、あーウザ!と思いながら押し戻しているうちに、電車が走り出した。

そんな電車に鍵っていやに大きく横揺れし、そのたびに乗客は風になびく稲穂のように一斉に揺れた方向によろめく。

しばらくすると、その後ろのヤツの息が急に荒くなった。
そういえばさっき電車に乗り込むときのヤツの様子を見かけたが、どうやらその先輩と呑んだ帰りだったらしく、「ちゃーんと帰れよぉ!」と云われて「ふぁーい大丈夫ですぅ...」と、ずいぶんロレツの回らない口調だった。
そうとう酔ってやがるな、コイツ...

そのうち「ううー気分が悪い〜」とのたまい始めた。
うっヤバい!、コイツこのままだと絶対に吐くぞ...と危惧を憶えた私は、わずかな隙間に体を滑り込ませるようにしてヤツの正面から避難した。
周囲のほかの乗客もこいつの様子がおかしいのを感じたらしく、怪訝な表情で見ている。
次の停車駅まであと数分...吐くんじゃねえぞーと祈るような思いをして過ごす。
こういうときはわずかな時間でも、とても長く感じるもの。


しかし天は我に味方したようだ。
電車が停まり、人の波が昇降口に向かって流れ出すと、ヤツはもう自力では立ってられない様子でその波に飲まれていた。
そして波が少し引いたところで、ヤツが床が横たわっているのが見えた。
人々の脚が蔑むように、わざとかどうかわからないが、ときにはヤツを蹴りながら足早に外へ向かう者さえいる。
云うまでもなく、私もさっさとその場を立ち去った。

まあ「呑んでもいいけど呑まれるな」ってコトだろう。
冷たいようだが、しかし世の中の風はさらに冷たいのだ。

かくいう私も、店を出るときに段差で脚がもつれて危うく転倒するところだった。
辛うじてバランスを取ったが、そのせいで酔いがすっかり醒めてしまった。